「胎児の代弁者」
小さないのちを守る会 会長・理事長
中野島キリスト教会牧師
國分 広士
主は人がいないのを見て、とりなす者がいないことに啞然とされた。それで、ご自分の御腕で救いをもたらし、ご自分の義を支えとされた。(イザヤ59:16)
辻岡健象先生の引退に伴い、会長となりました國分広士です。牧会をしながらの奉仕ですから時間的にも制約があり、辻岡先生と同じ事はとてもできませんが、辻岡先生から「働きの大小よりも、日本にプロライフの働きがあることが大切だから、会を存続させて欲しい。」という言葉をいただき、会長という立場を引き受けることに致しました。
プロライフとはいのちを守るということですが、特に訴えているのは、人工妊娠中絶によって失われる危機にあるいのちを守りたいということです。活動初期の頃、辻岡先生が体験された原宿での論争の逸話を思い起こします。若者が自由に音楽演奏などをしている歩行者天国で、胎児の人権を守ろうとアピール活動をしていた辻岡先生たちを、女性の権利を訴える人たちが取り囲み、「女性の選択権を奪うのか?」と激しく抗議したというのです。論争は3時間も続き、激しい抗議の声に対して辻岡先生は、「女性の側の訴えはわかったが、胎児の側の意見も聞くべきだ。」と答えたそうです。しだいに抗議の勢いが失せ、一人また一人と立ち去ったそうです。姦淫の女(ヨハネ8章)を彷彿とさせる出来事でした。
胎児はことばを発することができません。ですから意見は代弁しなくてはなりません。殺人事件において、殺された被害者の無念を検事が代弁するように。胎児はきっと育ちたい、生きたいと思っているはずです。
胎児の思いを真に知っておられるのは主ご自身です。冒頭の聖書の言葉で、主は「とりなす者がいないことに啞然とされた。」とあります。神のかたちである人間が、自分のことばかり考え、同じく神のかたちである他の人のためにとりなさないことを、主はあり得ないと思われるのです。そして誰も助けないから、主御自身が救い主となられたのです。胎児の思いを知る主は、胎児のために私たちがとりなさないなら唖然とされるのではないでしょうか。
偉そうなことを言える者ではありません。会自体も、以前のように養子斡旋を行なっていませんので、何ができるのかと悩みます。それでも、今も失われる危機にある胎児の代弁者のつもりで、「小さないのちを守ろう」と声を上げ続けたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。